闇夜に真紅の薔薇の咲く
Xx.+.
真夜中の校内。
新月である今日は、月の光も地上には届かない。
完全な闇に閉ざされた世界には、人は無意識に恐れをなして近づかないもの。
なのだが、一人だけ例外な人物がいた。
人の気配が一切感じられない教室内で、何の飾り気もない夜空を見上げる影が一つ。
彼は愛おしそうに最後尾の窓から二番目の列の机を指の腹で撫でると、僅かに口角を釣り上げた。
「――見つけた。お姫様」
発された声は、青年にしてみれば高く、少年にしてみれば低い。
どこかあどけなさの残るその声音は楽しそうに弾み、彼は楽しげにくすりと笑った。
そして不意に、手に持っていた小さなクマらしきぬいぐるみの付いたストラップを目の前にかざすと優雅な仕草で机の上に置く。
「早く、目を覚ましてね。ボク、もうすぐ限界だよ」
悪戯っぽく響いた声は、誰に聞かれるでもなく闇に吸い込まれて消えていった。
真夜中の校内。
新月である今日は、月の光も地上には届かない。
完全な闇に閉ざされた世界には、人は無意識に恐れをなして近づかないもの。
なのだが、一人だけ例外な人物がいた。
人の気配が一切感じられない教室内で、何の飾り気もない夜空を見上げる影が一つ。
彼は愛おしそうに最後尾の窓から二番目の列の机を指の腹で撫でると、僅かに口角を釣り上げた。
「――見つけた。お姫様」
発された声は、青年にしてみれば高く、少年にしてみれば低い。
どこかあどけなさの残るその声音は楽しそうに弾み、彼は楽しげにくすりと笑った。
そして不意に、手に持っていた小さなクマらしきぬいぐるみの付いたストラップを目の前にかざすと優雅な仕草で机の上に置く。
「早く、目を覚ましてね。ボク、もうすぐ限界だよ」
悪戯っぽく響いた声は、誰に聞かれるでもなく闇に吸い込まれて消えていった。