優雨-you-
第2章/次の雨の日
あれから1ヶ月が過ぎたけれど、野島君とはまったく話していない。


クラスはまた元通りに戻った。

私は1人のまま、教室の隅から聞こえてくる悪口に気にしていないフリをする。

傘のことについて、結局謝罪はなかった。

担任に事情を聞かれた女子たちがしらばっくれたらしい。

担任はそちらの言い分を信じてしまったのだ。

納得いかない部分もあったけれど、代わりに貰った傘を見れば怒りも多少治まった。




昼休み、華やかな男子のグループが大声で女子の採点をしていた。

発言はしていないけれど、その中に野島君も入っていた。

「伴野とか清水はポイント高いよなぁ。性格良いし話しやすいし。」

男子たちの言葉に、聞き耳を立てていたギャルたちが歓声を上げた。

調子に乗った伴野が、彼らの中へと入って行き、此方を見ながら言った。

「じゃあさ、紫藤さんって何点?」

聞いていた女子たちが笑いだした。

男子たちがニヤニヤしながら此方を見るのが分かった。

「顔は可愛いよな。なんかお嬢様っぽいし。」

「持ち物とか若干オシャレだよな。」

「あ、でも私服がゴスロリっていうのはかなり引くかも。」

私は少しだけ野島君の方を見た。

彼も此方をしっかりと見ていたようで、1ヶ月ぶりに目が合った。

「ぼっちだし少し暗いし、30点くらいじゃね。」

男子の言葉に、更に女子たちが声をあげて笑った。

――人を採点できる顔か、ゴリラ。

心の中で男子たちを毒づきながら、私は悲しい気持ちだった。




「野島は、紫藤さん何点だと思う?」

伴野やその取り巻きに話を振られ、野島君はあからさまに嫌そうな顔をした。

「あー、ダメダメ。こいつ女嫌いだから」

そう軽く言う男子の頭を、野島君は横から叩いた。

それから、伴野たちを仰ぎ、小さな声で言った。

「少なくとも、人のものを盗んだり壊したりするお前らは零点なんじゃねーの。」



泣き出した伴野を慰めながら、男子たちは野島君を睨んでいた。
昔の話をわざわざ持ち出すな…と叱責された野島君は、冷めた表情のまま漫画を読んでいた。

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