†ゆぅぱぱ。完結作品SS集†
皐がさっき驚いた顔をしたのは、俺のこの腫れた頬のせい。
真っ赤になったそれは、誰かに殴られたんだと一目瞭然だった。
「で?なにそれ」
「ちょっと律希と喧嘩しちゃって」
「笹野と?笹野も随分強いな」
女に殴られてここまで赤くなるんだな、としみじみと呟く皐。そこ、感心するところじゃないからね?
「何したの、お前」
「あれ、もう俺が何かやらかしたのは決定事項なんだ?」
「そうじゃなきゃ、こんな春休みにわざわざ笹野が吉馬呼び出して、殴ったりしないだろ」
そう、四月一日。今は春休みの真っ只中で。
俺達は次、二年生になる。
「まあ呼び出したのは俺なんだけどね」
「……はあ?」
「ほら、今日エイプリルフールじゃん?だからさ──」
それは、ちょっとした悪戯のつもりで。
そして、女々しい俺の、願掛けだったんだ。