苺な彼女と、エスカルゴな彼。
『いいかあ、謝って済むなら世の中ケーサツはいらな「先生、すみませんっ」
僕はそう言うのと同時に踵を返し、足早に職員室の出口へ向かった。
『おいっ瀬名!!』
後ろで欽ちゃんが何か叫んでたけどそんなの、今の僕には気にならなかった。
欽ちゃんには悪いけど、僕の優先事項の一番目はいつだってイチルちゃんで、今頃イチルちゃんが一人で寂しい気持ちでいたら、と思うと自然と図書室に向かう足取りは駆け足になる。
…というのも建前で、結局こうやって一刻も早くイチルちゃんの声を聞きたいと思って走っているのは僕。
ほんと自分でもまいっちゃうくらい、イチルちゃんに依存している。
職員室があるのは一階で、図書室は三階。
しかも渡り廊下を渡った教室棟とは反対の特別棟に位置している。
少し額に汗を感じながらも扉を開けると、その火照った体に図書室の涼しい冷房の風が当たった。
そっと、足を踏み入れる。
「イチルちゃ、」
…二歩目が、踏み出せなかった。