苺な彼女と、エスカルゴな彼。
何気ない、いつものイチルちゃん特有の例えだったんだと思う。
でも、この時はそんな風に冷静に考えられなくて、
「ごめん、みつやはまた今度でいい?」
「…え、いいけどどうしたの?具合悪い?」
そう言って手を伸ばしてくるイチルちゃん。
パシンッ
「あ、」
イチルちゃんの口から漏れた短い声。
僕の心の中でもそれと似たような響きがあった。
「…ごめん。ちょっと何か今日、変みたい。とりあえず夜道は危険だし、送るから」
「……うん」
明らかにイチルちゃんの声はしぼんでいる。
それでも何も言葉を掛けてやれなかったどころか、いつものように手すら握ってやれなかった僕は最悪だ。
どうしてだろう。
体どころか、心まで冷たくなってきているのを感じる。
こんな積もりじゃなかったのに―……