苺な彼女と、エスカルゴな彼。
エスカルゴの衝撃
どうやら今日は、とことんツイていないらしい。
神様ときたら、本当に意地悪だ。
そう思ったのには、きちんとそれなりの理由があるからだ。
それは、晩ごはんの時間だった。
「息子よ、私の料理の才能に嘆息しなさい」
自信満々、と言いたげな母さんがまるで何処かのレストランみたいにテーブルに並べたのは、洋風な料理の数々。
幾つかは見た事がある。
けれど、
「…これは?」
肝心のメインディッシュは初めて見るものだった。
「まあ、とりあえず食べてみなさいよ。さっき味見したけど絶品に仕上がったわ」
母さんが2つあるうちの、空いていた向かいの席に腰を下ろすと、僕は再びその料理に目を落とした。
サザエによく似たその形は、洋風なソースがかかっていて、和食のそれとは違うため新鮮さを感じる。
「さあさあ、そんなに見てないで食べる食べる」
母さんはそう言うと、ナイフとフォークを器用に使い、身を殻からえぐり出したかと思うと、それを口に運んだ。