苺な彼女と、エスカルゴな彼。
「うーん!美味ね。さすが私」
母さんはぶつぶつ言いながら、器用に殻の山を作っていく。
その様子を見ながら、僕も見よう見まねで身を取り出した。
プリプリしているそれを口に放り込む。
「…美味しい」
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夕食を終えて、食器洗いなど後片付けをする。
流し台から皿やら、フライパンやらが消えていく。
すると、あるものが僕の目に留まった。
それは、どうやらあさりやしじみが入っているパックのようで、ただそれと違うのは書いてある文字と絵柄だけ。
「…エス、カルゴ」
そして、その下にはイラスト調でよく見知った生き物が描かれている。
「母さん、エスカルゴってまさか、」
「ん?あー、外国のカタツムリのことよ」
衝撃だった。エスカルゴの衝撃。
「だって、言ったらトモキは食べたがらないかなあって思って」
きちんと事後報告するつもりだったのよ?と、母さんは言う。
でも、問題はそこじゃない。
イチルちゃんは言った。
「…コレが、僕に似てるって何で?」
ガーン。軽い目まいさえする。
「そう?私はイチルちゃんの例え、さすが!って思ったけどねー」
瀬名家には、そう言った母さんの恰幅の良い笑い声だけが響いた。