苺な彼女と、エスカルゴな彼。
頭を冷やそうと思って、屋上へ来た。
いつものことなら図書室へ足を運ぶのだけれど、昨日の現場でもあるそこへは、気持ちが進まなかった。
手すりに寄り掛かって、下の世界を覗く。
遅刻して来た生徒が数名、生徒指導の鬼教官の説教をくらっている。
そこに彼女の姿がないことに、ほっとしている自分がいることに気づいた。
いつだって、いつだって僕はイチルちゃんを想っている。
こんな時だって、性懲りもなく。
寝転がって、コンクリートに頬を寄せるとその冷たさが心地よい。
それが惜しくてしばらくそのままでいると、大きな音に叩き起こされた。
ドン!
「………いた、い」
その人物を見て目を丸くせずにはいられない。
「イチルちゃん!?」
屋上にダイブしてくるという荒業を見せたのは、僕の彼女だった。
「…トモ、キくん。…いっ」
「だ、大丈夫?」
慌てて駆け寄ると、イチルちゃんの膝小僧は出血していた。
「…保健室」
「えっ?」
考えるよりも先に僕は、イチルちゃんの膝の裏と背中に手を回して屋上の階段を下って行った。
途中、すれ違った人には何か言われた気がしたけど、そんなことより今はイチルちゃんの方が大事だから構っていられない。
数分もかからないうちに着いた保健室のドアを開けると、保健室の先生は大変驚いた表情で出迎えてくれた。