苺な彼女と、エスカルゴな彼。
「…はい。処置完了っと」
「ありがとうございます」
イチルちゃんの両膝にはガーゼが当てられた。
「もう、本当にびっくりしたのよ?MONACAくんタイムを味わっていたところにいきなり来るんだから。瀬名くん」
「すみませんでした。でも、無我夢中で…」
「はあー。若いっていいわねコノヤロー」
コーヒーに口をつけるミホ先生は、つい最近失恋したらしい。
生徒を差し押さえて、学校一の恋多き彼女。
「並木さんが羨ましいわ。瀬名くんみたいに精一杯愛してくれる彼氏がいて」
その言葉に、怖くなった。
今になって、先ほどまで思い悩んでいたことを思い出したからだ。
イチルちゃんに、否定されたらどうしよう。
もう彼氏じゃないって、言われたら…
「そうですね。…トモキくん以上の人はどこを探してもいません」
その言葉に、涙が出そうになった。
その笑顔に、全てがどうでもよくなった。
「イチルちゃん、」
「うん」
「帰ろっか」
「うん」
その日、僕たちは手を繋いで、途中でみつやに寄り道をして、あんみつを食べた。