夜がくるよ【短編】

「朝がきて。お昼になって、…あたし、頑張ったのよ。」


 僕は彼女が
 何を欲しているのか察した。


「知ってるよ。識ってる。 えらいね。よく頑張ったね。」


 おそらくこれで合っているのだろう。

 彼女は相変わらず
 顔さえ伏せたままだが。


「でもやっぱり、夜はくるの。……こわいよ…」


 本格的に泣き出してしまったらしい。

 鼻水をすする音と、肩の震えでわかった。


 たしかに夕日は、もう半分ほど見えなくなっていた。

 僕らの背中には明るい夜がある。


「夜はこわいよ」


 声をあげて泣き出す彼女に
 僕は笑った。
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