夢現
風邪薬
風邪薬は基本的に飲まない。
薬が好きとは言わないが、別に嫌いとか苦手という訳ではない。
まだ、耐えられるのに何だか負けたような気持ちになるので飲まない。
意地っぱりと言うか、強情と言うか。
悪い事に自分がそんな人間だという自覚がある。
喉が痛くて、おかしな胸に響く咳も出ている。
なのに煙草を止めようともしない。
喉の痛みに耐えられなくなってきたら、熱い珈琲を飲んで喉を麻痺させてごまかす。
おかしな咳を繰り返しているうちに、まるで喉が切れたかのように咳をした後に口の中に血のような味が広がるようになる。

そんな自分が、風邪を自覚したその日に薬を飲んだ。
体調の悪さに耐えられなかった訳ではない。
次の休みにあなたの隣で眠りたいと思ったから。
夜中にあなたが自分の咳で起きてしまわないように。
あなたにうつしてしまわないように。

自分で自分を笑ってしまいそうになるけれど。
そんな事を考えたら、1日3回2粒几帳面に薬を飲んでいる。
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