僕が君にできること
人ごみをかき分け出ると撮影スタッフの中に見覚えのあるボサボサが立っていた。
「テテ?…」
人ごみの先にいる湯川旬に目を向けると確かにそこにはあの人がいた。
目の前のこの人は誰?
近寄り確かめることにした。
ボサボサの彼に見えるその人は彼とは違う甘い香りがした。
あまり見つめていたのでその人は振り返った。
ボサボサの黒縁メガネは彼そっくりだったけど違っていた。
「はい!休憩は入まーす」ADの声に目の前の人は湯川旬に駆け寄った。
耳元で何かを話し湯川旬はドリンクを飲みながら頷いた。
「マネージャーちょっと」
監督に手招きされたその人は湯川旬のそばを離れた。
その瞬間湯川旬…いやテテと目があった。
かっこいいキメ顔のあの人の顔が急に崩れて子犬の瞳で笑った。
私とテテの間にいるたくさんの人ごみはまるでそこにはないものかのように2人だけのように思えた。
口元が何か言っていた。
「な・ぞ・は・と・け・た?」
また駆け寄ってきたマネージャーを指差し口元が動いた。
「か・げ・む・し・ゃ」そう言ってまた笑った。
「だ・い・じ・ょ・う・ぶ」次の言葉を口にするテテの目は真剣だった。
私は欲張りです…
彼氏がいて幸せなのに確かにあなたを求め始めています。
この先は…何もかも失うことになるかもしれない。
でも…どうしようもない思いであなたを求めてる。
私はテテを見つめ返しあの人だけに聞こえるように口を動かした。
「し・ん・じ・て・い・い・の・か・な」
そしてテテはにっこり微笑みを返してきた。
撮影が終わると人混みは湯川旬へと押し寄せた。
マネージャーに誘導されながら前を通り過ぎようとしたテテは喧騒の中「あの場所で」と私にだけ伝わる言葉を呟き去っていった。
私は美咲と別れたあと「あの場所」に向かった。
いつになるかわからない。
もしかしたら、来れないかもしれない。
でもあの言葉を信じて向かっていた。
シリーズものの漫画を一つ読み終えた頃には終電間近になっていた。
やっぱり来れないよね。スケジュールいっぱいだろうしな。
あの言葉を責めるつもりはない。
あなたを待っているこの時間も夢のようで、それは幸せな時間だから。
本当に夢なのかもしれない。
夢の方がいいのかもしれない。
そんな事を考えながら本を戻し店を出た。
駅へ向かおうとしたその時だった。
手を引かれ振り返った。
「ごめん待たせちゃって、もう帰るよね」
前髪を汗で濡らし息をあげたテテがそこにいた。
会いたかった。
本当に会いたかった。
「今日は会えないと思ったから帰ろうと思って」
私の言葉を遮るようにテテの甘い匂いに包まれた。
「終電行っちゃうけどもうちょっと一緒にいてもいい?」
顔を埋めた胸の奥からテテの声が聞こえた。
私はYESのつもりでテテを抱きしめた。
「テテ?…」
人ごみの先にいる湯川旬に目を向けると確かにそこにはあの人がいた。
目の前のこの人は誰?
近寄り確かめることにした。
ボサボサの彼に見えるその人は彼とは違う甘い香りがした。
あまり見つめていたのでその人は振り返った。
ボサボサの黒縁メガネは彼そっくりだったけど違っていた。
「はい!休憩は入まーす」ADの声に目の前の人は湯川旬に駆け寄った。
耳元で何かを話し湯川旬はドリンクを飲みながら頷いた。
「マネージャーちょっと」
監督に手招きされたその人は湯川旬のそばを離れた。
その瞬間湯川旬…いやテテと目があった。
かっこいいキメ顔のあの人の顔が急に崩れて子犬の瞳で笑った。
私とテテの間にいるたくさんの人ごみはまるでそこにはないものかのように2人だけのように思えた。
口元が何か言っていた。
「な・ぞ・は・と・け・た?」
また駆け寄ってきたマネージャーを指差し口元が動いた。
「か・げ・む・し・ゃ」そう言ってまた笑った。
「だ・い・じ・ょ・う・ぶ」次の言葉を口にするテテの目は真剣だった。
私は欲張りです…
彼氏がいて幸せなのに確かにあなたを求め始めています。
この先は…何もかも失うことになるかもしれない。
でも…どうしようもない思いであなたを求めてる。
私はテテを見つめ返しあの人だけに聞こえるように口を動かした。
「し・ん・じ・て・い・い・の・か・な」
そしてテテはにっこり微笑みを返してきた。
撮影が終わると人混みは湯川旬へと押し寄せた。
マネージャーに誘導されながら前を通り過ぎようとしたテテは喧騒の中「あの場所で」と私にだけ伝わる言葉を呟き去っていった。
私は美咲と別れたあと「あの場所」に向かった。
いつになるかわからない。
もしかしたら、来れないかもしれない。
でもあの言葉を信じて向かっていた。
シリーズものの漫画を一つ読み終えた頃には終電間近になっていた。
やっぱり来れないよね。スケジュールいっぱいだろうしな。
あの言葉を責めるつもりはない。
あなたを待っているこの時間も夢のようで、それは幸せな時間だから。
本当に夢なのかもしれない。
夢の方がいいのかもしれない。
そんな事を考えながら本を戻し店を出た。
駅へ向かおうとしたその時だった。
手を引かれ振り返った。
「ごめん待たせちゃって、もう帰るよね」
前髪を汗で濡らし息をあげたテテがそこにいた。
会いたかった。
本当に会いたかった。
「今日は会えないと思ったから帰ろうと思って」
私の言葉を遮るようにテテの甘い匂いに包まれた。
「終電行っちゃうけどもうちょっと一緒にいてもいい?」
顔を埋めた胸の奥からテテの声が聞こえた。
私はYESのつもりでテテを抱きしめた。