僕が君にできること
壊したくないものを、大事にしすぎて壊してしまった。
そんな気持ちだった。


テテが踏み込んできたラインを無視すればよかったんだ。
あの瞬間テテには私の存在は重くなった…きっと。


あれから数週間が経った。


「ようやく関東地方も梅雨明けしたようですね」天気予報士がテレビの中で話している。


夕暮れに染まる渋谷の様子が流された。
電光掲示板には湯川旬のシャンプーのCMが流れていた。
抱き寄せる女性の髪を愛おしそうに撫でるテテ。


「そうやっていとも簡単に抱きしめるんだよ…あなたは」


溜息とともに缶ビールをあけた。


「次のコーナはエンタメNOWです」
女子アナの笑顔のあと派手な曲とともにエンターテーメントコーナーへ変わった。


「BTSが今月からアメリカロスアンゼルスを皮切りに世界11カ所でスタジアムツアーが行われます」

画面にはLIVE映像が流された。激しいダンスを踊る中にテテがいた。


初めて見た。こんな風に踊れるんだ…。


漫画を読んでいる姿しか見たことない私は釘づけになった。


そう言えば、咲子にLIVE DVDを借りてたんだ。


今更見るのも辛くなるんだろうけど、見たかった。私の知らないテテを。



テレビの真ん前に座りスタートボタンを押した。


沢山のライトに照らさせたスタジアム。


爆音とともにBTSが現れた。







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