僕が君にできること

誰かを想う涙

携帯の着信音がなった。相手は隼人だった。


「もしもし朋?今品川なんだけど寄ってっていい?」


遠征から今日帰ってくるとは聞いていた。
ハードな遠征で疲れているに違いない。


「え?!あ~いいよ。お風呂入っちゃってるんだけど」
「あ!俺も入っていい?」


空気がなくなった風船のようにしぼんだ気持ちが隼人の声で少しホッとしていた。


ずるいよね私は。


「お土産があるんだ。なんか今日渡したくてさ」
嬉しそうに電話は切られた。


実業団でバスケットボールをする隼人にもファンはたくさんいる。
バスケットボール選手にしては少し小柄だけど、それでも私より20Cm高い景色を見ている。
センターで大きい選手をすり抜け得点を重ねる隼人にはプロからの声もかかっているようだ。


隼人は彼女がいることも公表している。
それほど私を大切にしてくれているということ。



隼人と出会ったのは3年前。
違う選手が目的でいつも応援しに来ていた私を彼が覚えてくれていた。


試合中白熱する私はかなり目立っていたと前に私の印象を話してくれた。


負け試合にぼやく私にdietペプシを奢ってくれた隼人。
その当時補欠だった隼人とその後プレーについて熱く語ったことを思い出した。
偉そうに戦略法を語る私に選手並みに詳しいなって笑っていた。


その後の何回目かの試合で隼人はスタメンに入りシュートを決めた。
試合の後「ナイスシュート!」って声をかけたら隼人は言ったんだ。


「あなたの為に決めた!」


今思えば…超くさいセリフだった。でも嬉しかった。


幸せだったんだ。


あの人には会わなかった方がよかったのかもしれない。



テレビの湯川旬は何万人のファンの前で輝いていた。

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