僕が君にできること
洗った髪の毛が乾いた頃インターフォンがなった。
モニターにはおどけてカメラを覗き込む隼人がいた。


すこし泣いた目に気がつくかな…。


玄関を開けると隼人は倒れこむように抱きついてきた。

「ただいま!寂しかったろ!」
グイグイと揺さぶるように抱きしめ髪の毛に顔をうずめた。


「あ~朋の匂い。男どもの野獣臭を毎日嗅がされるとさすがにおかしくなるわ」


頭をくしゃくしゃと撫でた後隼人は慣れた場所のように部屋へと入っていった。


「このまま風呂はいちゃっていい?」
隼人は既にポロシャツを脱ぎかけていた。


「うん。何か食べた?」


「機内食食べた。ビールある。朋も飲むべ?」


私は微笑んで答えた。


隼人がお風呂にはいっている間脱いだ服を畳んだ。
畳んだ服をそっと抱きしめると安心する香りがした。
あの人とは違うけど甘い香り。


この安心に包まれたら心は壊れずにすむんだろうな。
そうするべきなのに心はそれでいいのか?と揺れる。
「くぅ~~さっぱりしたぁ~」


家に置いてある隼人のTシャツと短パンに着替え、髪の毛をタオルで拭きながらベットの脇に座った。



「お疲れ様でした」


ビールを差し出し言った。


「ありがとう。お疲れ」


隼人は受け取ったビールをかざして答えた。


テレビを見ながら遠征で離れている間のお互いのことを話した。
隼人は包み隠さず話してくれているのだろう。


それが後ろめたかった。


あの人のことは言わない。
いったところで信じてなんかもらえない。
そして何よりずるいけど今の隼人との関係を壊したくなかった。


「あ!そうだ、お土産渡さなきゃ。何のため俺ここ来たのか忘れるとこだった」



隼人はカバンをガサゴソとあさり小さな箱を取り出した。


「北海道土産チョコがけポテトチップス」
ニコニコと箱を差し出した。


「あっこれ美味しいんだよね。ありがとう」
「そしてもう1つ。すごいもの見つけたんだよ。目つぶってみ」


後ろに何か隠し目をつぶるよう隼人は顎で催促した。


「ちょうだいの手をしろ」


そう言われその通りにした。
ちょうだいの手の薬指に何かが差し込まれた。








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