僕が君にできること
「南さん。湯川さんはどんな存在ですか」


注目の映画の公開前に主演の二人の熱愛は、さらに注目度を上げていた。
世の中はそれを望み、勝手にその先の妄想を膨らませていた。



「大切な友人です」
「お友達なんですか?一緒にいる写真を何度か撮られていますが、お友達でいいんですか?」

四国のロケが終わって東京に戻って来ても何度か会っていた。
お互いの想いに対しては触れず、目を背け何かを埋め合った。
何も言わなくてもお互いの気持ちはわかっていた。交わらない想い。


あなたは誰かを想いそのあなたを私が想う。



私が踏み込んだらこの関係は終わる。



だからこのままでいい_____。




「はい。大切な友人です」



私は世の中が望む自分を演じ笑った。




「柚木も囲まれた?大変な騒ぎだね」


先に楽屋に入っていた旬が振り返り言った。


「友人って言っておいたよ。旬はなんて答えたの?」
「僕も同じ。柚木は大切な友人。」



あなたはひどい人_____。


望む答えは決して返ってこないことはわかっている。
あなたの前でも私は自分を演じる。でも演じることができない、偽れない想いが私の中を染み込み広がっている。



「本番行きます。スタンバイをお願いします」


スタッフがノックの後伝えた。


「はい。よろしくお願いします」


閉じたドアを確かめた後、お互い呼吸をするように自然な流れでキスを交わした。


_____あなたは私の大切な友人______



見つめ合う目には私は決してうつらない。


誰かを想うあなたの目には______。
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