僕が君にできること
「ありがとう」


そういって指環を受け取り朋は涙を流した。
その涙を俺は素直に受け止められず心のどこかで疑い、嫉妬していた。



俺の遠征で離れることが多くても、きっと気持ちは離れていかないって根拠のない自信があった。


朋は俺のことだけを想っていると信じて、勝手な自信でちゃんと見つめていなかったのかもしれない。


いつからか朋の笑顔が寂しさを押し殺しているように見えたんだ。



離れていこうとする気持ちに初めて気づいた。「離したくない、ずっとそばにいて欲しい」って当たり前のようにそばにいる時は考えなかったのに。
やっぱり俺は身勝手だ。


彼女のどこか寂しげ笑顔を気づかないふりをしていた。
離したくない思いで結婚というかたちで朋を縛り付けようとしていたんだ。
きっと結婚って確かなものを示せば、またいつもの笑顔を見せてくれるって。


俺もまた愛しいと思う気持ちの中に憎しみを隠し、そのことさえも目を背けていた。


朋は答えを数日後返してくれた。
「こんな私だけど隼人のそばにずっといてもいいですか」


彼女は微笑んだ。


俺は彼女を失いたくないから彼女の笑顔の下に隠したものも、自分の本当の気持ちも全てに目を背けた。



でも掛け違えたボタンは最後合わさることがないように、取り戻すことはできなかったのかもしれない。







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