僕が君にできること
雑誌で緩やかに流されていた前髪は無造作に目を覆い、艶っとしていた口元には無精髭が生えていた。

それでも黒縁メガネの奥はあのセクシーな瞳をしていた。

一瞬見とれてしまっていた。

今1番抱かれたいだかなんだか知らないけど、誰でも自分のファンだと思って近づいてる?

変なプライドから私はその男を知らない振りをすることにした。

「あ~これ?・・・・次読みます?」

新刊をその男の目の前でヒラヒラさせた。

「いいんですか?!読む読む!」

ボサボサの子犬のようにその男は喜んだ。

「読んだら回しますね」

と言い、いつものスペースに入りドアを閉めようとすると、その後ろについてくる気配を感じた。

「え?!何か?」

「あの・・・・僕も一緒いいっすか?」

思いもよらない展開だ。

普通は受け入れられないでしょう。初めてあった人と同室など。

だがしかし・・・・この極小スペースに抱かれたい男No.1と一緒?????

頭が混乱する・・・・。

「え?!何で?」

問いただす声が上ずってしまった。

「早く読みたいから。」

まん丸に見開く瞳が本当に子犬に見えてきた。

「同室なんてありえない!それに待たれるとプレッシャーなんですけど。」

のけ反りながら抵抗すると

「邪魔しませんから!その場にいるだけ!」


その男は頭の上で手を合わせ、またしても子犬のように上目遣いで訴えてきた。


負けた・・・・。
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