僕が君にできること
表参道の駅で待ち合わせ、式場の下見や、ドレス選びをした。


何かを吹っ切ったように、朋は笑顔で式の準備のことや、会社での他愛もない話をした。その笑顔が少し俺の気持ちを楽にした。


今まで通り、これでいいんだって。


ドレスはオーダーすることに決め、同じような形のものを着てみた。
肩まである髪をゆるく結びアップした朋は、いつものメイクだったにも関わらず綺麗だった。恥ずかしそうに出てくる朋に言葉が出なかった。


「ご新郎様見とれていらっしゃいますよ」と係りの人に言われ、朋はさらに赤くなった。そして俺までも赤くなっていた。


店を出て改めてショウウインドウを二人で見上げた。純白のドレスに重なる朋の表情は泣いているように見え、俺の胸は握りつぶされるかのように苦しかった。


「幸せにするから」

そっと握った手に朋は俺を見上げた。


「うん」と頷く朋の顔は笑っていた。


本当に求めている人、本当に愛している人は自分にとって体の一部のようなものなのかもしれない。


どんなに求められてもどんなに愛されても、自分の求める人でなければ、体の一部に溶け込んでいかない違和感を覚える。合わない手や足を付けられている朋は苦しそうだけど、必死に溶け合おうとしていた。それが余計に辛く、憎らしくもあった。





< 50 / 54 >

この作品をシェア

pagetop