鬼獣 ~伝説の女総長~
プロローグ
ある日の夜のこと。
町の外れにある、大きな倉庫の中の小さな部屋にあたしは居た。
「マナ。本当に行くのか?」
心配そうな顔をするこの男は、「真鬼」という暴走族の副総長。
「あぁ。行くよ。」
それに答えるあたしは“吉永 マナ”
「真鬼」の8代目総長をしている。
通り名は鬼獣。
「そっか。」
「そんなにヘコまなくてもいいじゃないか。別に族を抜ける訳じゃねぇんだから。」
「だって心配なんだよ。いきなり学校行くとか言い出して。」
「別に普通だろ。」
「どこが普通だよ!!いいか?マナがこれから通う学校には俺らの敵“黒鷹”の奴らがウジャウジャ居るんだぞ!!」
「知ってる。」
「そんな所に行こうなんて、自分から殺られに行くようなもんだぞ。」
「あたしを誰だと思ってる?」
「…………真鬼の……鬼獣。」
「あたしはそんな簡単にやられねぇよ。」
「でも「それに、ずっと通ってみたかったんだ。学校って所に。」
「だからって黒鷹の領地にある学校じゃなくてもいいだろ。」
「そこしかなかったんだ。あたしみたいなはみ出し者をあの学校だけは受け入れてくれた。」
真剣な顔で訴えるあたしを見た副総長は、観念したのか、ハァ…と息を吐いた。
「わかったよ。そこまで言うなら行ってこい。その代わり、聞いてもらいたいことが3つある。」
「なんだ?」
「まず一つ、鬼獣の力は出すなよ。お前は最強だからな。そこら辺の女とは比べ物にならないくらい強い。まぁ、あの学校には女はいないけどな。」
「大丈夫だ。万が一の時以外は力は出さねぇ。」
「二つ、黒鷹の奴らとはあまり関わるな。鬼獣だとバレるといろいろ厄介になるぞ。」
「なるべく気をつける。」
「三つ、何かあったらすぐ呼べよ。」
「あぁ。ありがとな。」
「ところでいつからなんだ?」
「明日。」
「はぁぁぁぁ!?」
「うるせぇ。」
こうしてあたしは、明日から学校に行くことになった。
どんな日々が待ってるだろうか。
それが楽しみで仕方なかった。