あいことば
駿は陸上部に所属していて、短距離専門のスプリンター。
「お前さぁ、
ベストが出たときはもっと喜べよ!」
そう言って、駿はにかっと笑った。
いっしょにあたしもにかっと笑う。
「嬉しいよ!
最近あんま調子よくなかったから♪」
あたしは、そう言うとさらに笑顔になった。
「おい、ダウンが始まるぞ!」
駿の言葉を聞いてグラウンドを見ると、他の部員がダウンを始めていた。
「やべっ」、と駿が言って、ストップウォッチをなおしに行った。
軽くアキレスを伸ばして、駿が帰ってくるまで時間をつぶす。
自己ベストー…
思わずニヤリとしてしまう。
「おいてくぞ、ヘンタイ。」
駿はそう言って、あっというまにあたしの横を通り過ぎて行った。
「ちょっ、ちょっと!
ふつーおいていかないでしょ!」
あたしがそう言うと、駿は少しスピードを落としてくれた。
なんだかんだ言って、駿はあたしに甘い。