裏新築祝い
 すぐに豪快ないびきが聞こえてきた。
 兄弟揃って、すごいいびきだ。

 悟の背中を睨んでいると、薫に呼ばれた。

さっきのことが気に入らなくて寝たふりをしていると、柔らかい腕が絡んできた。

なめらかな皮膚の蛇が、襟元からすべりこんできた。

冷えた五本の指が肌の上で跳ねる。

奥歯を噛んで、息を殺す。

「やめてよ」

文句を言うと、薫はぎゅっとあたしを抱きしめた。

「結婚したくない」
「しなければ」

「お母さん達、どうするの。早く孫が欲しいってうるさいのに」

「ほっとけば」

「娘としての義務は、果たしたい」

じわっと目頭が熱くなった。

薫はやるといったらやる。

いい妻になり、いい母になるだろう。
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