大好きだったよ。
「...海?上がったよ」


リビングでマンガを読んでいた海に声を掛ける。


海は無言であたしの横を通り過ぎて、


バタンっと扉を閉じた。


「...もう。何よ。カンジ悪い...」


...また一人じゃない。


寂しさを紛らわそうとしてテレビをつけてみる。


だけど、やっぱり面白くない。


人がいるのはブラウン管の向こうで。


こんなの慣れたはずなのに。

一人なんて毎日のことだったのに。


ちょっと、海にコクられたからって。

ちょっと、海と一緒にいる時間が増えたからって。


こんなんになっちゃダメじゃん...。


気が付くと涙が溢れていて。


膝を抱えて、部屋の隅で泣いていた。


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