本屋 和正の優雅な読書
酔った頭でも、優花はすぐに悟る。

この頭痛…この男が優花の頭を殴ったのだ。

この国語辞典で。

「何すんの!」

優花でなくても怒るのは無理もない。

その怒りに。

「イミダスや広辞苑では分厚すぎて使い勝手も悪く、また女性相手には強力すぎる、加えて持ち歩きにも不便…国語辞典くらいの厚さ、重さが鈍器としてはちょうどいい」

男性は答える。

訊いていない。

そんな事は一切訊いていない。

「私の質問にこ…」

たえろ、と言う前に。

「その文庫本」

男性は、再び冷静…というより冷徹な視線で優花を見据えた。

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