fragile
それから返事はすぐにやってきた

『なら一緒に死のうよ』

何処かのヤクザか、それとも面白がっているのか、もうなんでもよかった
死ねばこの生活ともおさらばできる

親からはいらない子と暴力を振られ、友達なんてものも居ない、ネットでもうまくやっていけない
居場所なんてどこにも無い
そんなのなら死んだほうがいい

はい、とメールを送ってまた返事を待った
死ねるんだ、と思うとなんだか可笑しかった
小さい頃、頑張って集めたシール
あの頃は宝物でとても偉大な物だった
でも今はただのガラクタ、要らない物
そんな物をせっせと集めていたなんてくだらな過ぎて

『明日○○に朝10時に待ち合わせ、誰にも言わないで来て。遅れたら君は死にたくなかった、とみなすから、よろしく』

明日の朝10時まではあと15時間ある

とりあえず要らない物を全部処分しよう
パソコンも、携帯もデータを全部消して、要らない本やノート、教科書は燃やしてしまえ
服はボランティアの人に預けた
これが最後にするいい事かもね
気付けば夜の11時
遅い夜ご飯
ピリピリした空間の中で食べるご飯もこれで最後
きっと明日の朝には親達も仕事で居ないだろうから顔を合わせるのも今日が最後

食べてる最中にみそ汁をかけられたり、熱い鉄板で叩かれたけどそれも今日で最後
これから貴方達は誰に暴力をふってストレスを発散するの?せいぜい警察沙汰にならないようにね
心の中でクスクスと笑った
最後のお風呂、最後の睡眠、最後の夜
何もかもが最後なんだ
すっかり殺風景になった部屋を見渡しベッドに飛び込む
起きたら私は死ににいくんだ
まだ17歳なのに、いや、もう17歳かな

パジャマも無いから、明日着るスキニージーパンと、半袖のパーカーで寝た
後ろのポケットに、携帯と小銭入れを入れた
5千円もあれば電車代足りるだろう
心なしかわくわくしてきた気持ちを抑えて寝た

起きたら8時半
案の定親は居ない
着くのには1時間かかるから、早めに家を出た
少し暑くて、でもどこか肌寒くて、初夏の雰囲気がただよっていた


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