ダブルスウィッチ
それから三年間、彩子たちはオーストラリアで暮らした。


日本と違ってパートナーがいないことは、不利になるらしい。


だから結婚を急いでいたんだと、彩子はようやく気付いた。


条件付きの結婚はそのためだったのだ。


パーティーには着物を着ていくことが義務づけられていたし、お客様を招いて料理を披露することもあった。


彩子は母親から着付けくらい出来るようになりなさいと育てられ、姉妹は三人とも自分だけでなく人の着付けも出来る腕前だ。


料理は趣味ではあったけれど、好きなことだから苦にもならなかった。


英会話は高校生と大学生の頃、留学したことがあったから、お手のものだ。


今まではなんの役にも立たなかったこれら全てが、彼のためになっていることが彩子は嬉しかった。


自分のためにあるんじゃないかと思うくらいの条件は、ほとんどがクリア出来ていた。


ただ一つ、納得できない条件を除いては……


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