ダブルスウィッチ
彼女はえみりに礼を言って、亮介が夢中になるのがわかった気がすると悲しそうに笑った。


そしてそのままえみりと彩子は別れたのだ。


確かにそのあと自宅に帰り、自分のソファーベッドで眠ったはずだった。


なのに今、えみりはここにいる。


（まさか、あの薬の効果が今頃？）


信じられない思いで、えみりはそっと寝返りを打つ。


セミダブルらしいベッドにはえみりが一人しか寝ている様子はない。


けれど寝返りを打った先に、亮介の寝顔が見えて、やはりここは彼の家なのだと信じるしかなかった。


こんなことになるなら、もう少し彼女の情報を聞いておけば良かったとえみりは思う。


家での様子など何一つ聞いていないのに、急に放り込まれたのだ。


どうしていいかわからないのは当然のこと。


それでも亮介の隣に当たり前のようにいられることは、えみりにとってとても新鮮だった。


布団を捲り体を起こしてみる。


自分の体であって自分の体じゃない感覚に少しだけ戸惑った。


ベッドから抜け出して立ち上がると、やはり視界はいつもより低い。


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