ダブルスウィッチ
自分では絶対に着ないような服がハンガーに大量にかけてあるのを見つけた。


そういえば……と彩子は思う。


えみりは働いているんだろうか?


今日が出勤日なのだとしたら、仕事に行くのも面白いかもしれない。


ずっと専業主婦として家の中にいた彩子は、久しぶりに外の世界を見れる喜びに胸を躍らせた。


まだ鳴っているスマホを掴んで、その着信を躊躇いなく切ってから、また鳴り出す前に、彩子はそれを着信拒否にした。


それから電話帳を調べると、派遣らしき名前を見つけ、そこにかけてみる。


彩子も亮介と結婚する前までは派遣社員だった。


ならばどこで働いているのかは、そこに聞けばわかるはずだ。


彩子の思った通り、そこから派遣先を知ることが出来た。


相手は少し怪訝な声を出していたけれど、うまくごまかして早々に電話を切った。


急いでメイクをして髪をセットすると、ベージュのパンツにツイードのジャケットを羽織る。


焦げ茶のパンプスを履いて玄関のドアを開くと、外はいい天気だった。


鍵を閉めてエレベーターへと向かう。

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