ダブルスウィッチ
ホテルのような場所ならば、どこか現実からは離れているようなそんな気がしたから……


亮介がそれを家庭に持ち込む気はないことが窺える。


浮気は浮気なのだと、彩子は確信した。


やはり亮介は彩子と離婚する気はないのだ。


だからこそえみりは彩子の条件をのんだのだろう。


自分が彼の妻にはなれないということがわかっているから……


えみりは彩子になりたかったのだ。


無言電話を3ヶ月間も毎日かけてくるほどに。


まさか亮介と彩子の夫婦関係が、契約によるものだったなんて思いもせずに……


まんまと騙されてくれたえみりを彩子は鼻で笑う。


人のものに手を出した罰だと、せいぜい後悔すればいいと思った。


目的の駅に到着し、彩子は電車から降りていく。


なんとなく視線を感じて辺りを見回すと、えみりの姿をした彩子を見て振り返る男性が多いことに気付いた。


確かにこれだけの容姿なのだ。


目立つのも無理はない。


彩子はこれはこれで気分がいいものだと、いつの間にか会社までの道のりを、胸を張って颯爽と歩いていた。


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