ダブルスウィッチ
それだけを見ても、彩子が亮介の気に入るようにこの家を手入れし、彼の好みに合わせた食事を作っていたんだとわかる。


入れ替わってしまった今、ましてや彩子との連絡を断たれた今、えみりが亮介の気に入るような家事が出来るとは思えない。


亮介は彩子と別れるつもりはないと、えみりにはっきりと断言していた。


それがもしかしたら、自分が快適に過ごすための、彩子の専業主婦としての能力をかっているからだとしたら……


もし、このまま元に戻れなかったときのことを考えると、怖くなる。


亮介にとって必要だった彩子の存在を、えみりがそのまま引き継げるとは思えなかった。


離婚という二文字が頭を掠める。


今まで通り出来なくなったとき、亮介は彩子をどうするだろう?


もう必要ないとばかりに離婚されたら……


それこそ、彩子の思うつぼなのかもしれない。


彩子に戻る気がないなら、離婚されたところで困るのは、彩子の体をしたえみりなのだから……


20代の体を手に入れた彩子は、今夜亮介に抱かれるのだ。


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