ダブルスウィッチ
彩子はどう思うだろう?


たまにしか会えなくても、優しく触れてくる亮介を手放したくないと思うんじゃないだろうか?


えみりとして生きることを、彩子が選択してしまったら、もう二度とえみりは亮介に触れてもらえなくなるのだ。


それどころか、自分の夢も諦めなくてはならない。


亮介も褒めてくれたえみりの声。


歌うことはえみりにとって亮介と同じくらい大切なもの。


ペタリと座り込んだ拍子に捲れたスカートから膝小僧が覗いていた。


カサカサではないけれど、えみりのように白く滑らかな肌ではなかった。


両手で頬を覆ってみても、肌に弾力はない。


えみりは怖かった。


このまま43歳として生きていくのかもしれないと思ったら、不安に押し潰されそうになる。


(何とかしなきゃ……)


グッと拳を握りしめると、えみりは立ち上がった。


彩子の行動を思い浮かべて、家に行ってみようと思い立つ。


もしかしたらまだ家にいるかもしれない。


冷静に話し合えば、元に戻ることも可能だろうか?


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