ダブルスウィッチ
年代も違うのだから当たり前だけれど、彩子の服のセンスは嫌いではなかった。


ベージュのクロップドパンツを見つけてオフホワイトのブラウスと合わせてみる。


前を結ぶタイプのそれは体型をカバーして綺麗に見せてくれた。


特に太っているわけではないが、やはり若い体とは違って、痩せていても二の腕や肩はボリュームがあるような気がする。


だからこういう服を選んでいるのかもしれないと、えみりは思った。


いつもと同じ感覚でメイクをしていると、昨日会った彩子の顔を思い出した。


薄化粧だった気がする。


マスカラやアイラインは確かしていなかった。


目の前の顔を鏡越しに見ながら、頬にチークを乗せていく。


いつも通りやってるつもりなのに、彩子の顔には似合わなかった。


睫毛にたっぷりつけたマスカラは、妙にケバケバしく見えたし、丸く頬骨に乗せたチークも、なんだか若作りをしているかのように見える。


それだけのことなのに、えみりは年代の差みたいなものを感じて、大きく息を吐き出した。



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