ダブルスウィッチ
ホテルの部屋はフロントで聞いてすぐにわかった。
どうやらいつも同じホテルを使用しているらしい。
いつもご利用ありがとうございますなんて笑顔で頭を下げるフロントの女の子は、これが不倫だと知っていてそんなことが言えるんだろうか?
彩子は苦々しい思いで部屋に入ると、大きめのダブルベッドをただ眺めていた。
ここで、亮介とえみりは体を重ねていたのだと思うと彩子の中に強烈な嫉妬が生まれる。
この一年くらいの間にえみりはどのくらい抱かれたのだろう?
それは彩子が受け取った、夕飯はいらないというメールの数に比例するのだと、彩子は苦笑した。
そしてそれを嫌悪しながらも、彩子はえみりの姿で亮介に抱かれようとしている。
矛盾している、と彩子は思う。
せっかくえみりになったのだから、亮介と別れることも出来るのだ。
そうすれば彩子の元に戻ってくるかもしれないのに……
けれど、もし戻ってきたとしても、あの日から三年亮介は彩子を抱いていないのだ。
いまさらえみりと別れたくらいで、彩子を抱いてくれるとは思えなかった。