ダブルスウィッチ
外見は変わらないのだから、気づかれるはずはないのに、バレるんじゃないかと動揺したのだ。


それでも必死に平静を装って、そう?とだけ聞き返す。


「うん、なんかいつもは、サラダとうどんとかで、あんまり揚げ物は食べなかった気がする

体型とかお肌とかに気を使ってるんだなって思ってたんだぁ」


だから、いっつも綺麗なんだなって、とキラキラした目で見られるのは、彩子はどうも慣れない。


それでもえみりが食事に気を使っていたことはわかった。


「たまには食べたくなるのよ

普段、食べないから余計にね?」


彩子はそう言って、なんとかその場をごまかした。


広告を載せるための営業と一般的な事務をこなすだけの仕事だったけれど、何年も家事しかしてこなかった彩子にとって、魅力的に映るのは当たり前だ。


ランチを済ませ、午後の業務が始まっても、彩子は精力的に仕事をこなした。


要領さえわかれば、それほど難しくはない。


えみりがどの程度仕事をしていたのかわからないが、少なくとも彩子ほどはやっていなかったのだと、業務が終わる頃に主任に声をかけられて気づいた。


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