ダブルスウィッチ
彩子でなければ、亮介は普通の男で、セックスだって人並みにするのだ。


さっきのえみりに優しく触れる指や唇が、それを物語っている。


あれだけのことで、もうすでに動揺してしまっている彩子は、これ以上耐えられるのか不安になった。


亮介に抱かれたい一心で、えみりと入れ替わってまでここに来た彩子だったが、自分とのセックスとの違いをまざまざと見せつけられたとき、果たして素直に感じることが出来るんだろうかと。


彩子はもう一度自分に問いかける。


本当にこれでいい?


えみりの体で亮介と繋がることは、浮気の現場を自身で体験することにもなるのだ。


服のままベッドで眠ってしまっていたえみりを、亮介は叱りもしなかった。


むしろ、疲れているなら無理するなと心配する素振りさえ見せていたのだ。


潔癖な亮介には考えられない態度。


これから自分も使うであろうベッドなのだ。


普段の亮介ならシーツを取り替えろとでも冷たく言い放つかもしれない。


彩子はのろのろとベッドから起き上がり、ソファーに腰掛ける。


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