ダブルスウィッチ
ドキドキする胸を押さえて、彩子はのろのろとさっき亮介に脱がされかけたワンピースを脱ぎ捨てていく。


下着もすべて取り去り生まれたままの姿になると、ドアをゆっくり押し開き、まだ温かい湿った浴室へと足を踏み入れた。


亮介が入れたんだろう浴槽の湯は、ちょうどいい温度だった。


ちゃぽんと体を沈めると、えみりの目からは涙が溢れ出す。


温かい湯に包まれて、彩子はなんともいえない気持ちになっていた。


もう充分に自分との違いを見せつけられたというのに、これ以上みじめな気持ちになる必要はあるの?と自身に問いかける。


自分には経験のないえみりへの言葉や触れ方は、それでもその先を期待させるには充分だった。


彩子は自分が卑しい女なのだと自覚する。


みじめでもいい。


亮介に抱かれたい。


それが今の彩子の本音だ。


プライドなど捨てたっていいと彩子は思う。


一度くらい、ちゃんと愛されてみたいのだ。


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