ダブルスウィッチ
おねだり?と彩子は頭の片隅で考える。


いつもみたいに?


(あの子はいつもそんな風に、彼と……)


ふいに彩子は現実に引き戻された。


酔いしれる快感にどうでもよくなっていた意識がハッキリとしてくる。


亮介は彩子を抱いてる訳じゃないことを思い出して、慌てて亮介の膝の上から飛び退いた。


「えみり?」


不思議そうな亮介の声は、彩子を動揺させる。


覚悟を決めたはずなのに、言い知れぬ不安が彩子につきまとった。


いつもみたいに出来なかったら、どうなるのだろう?


彩子はそんな恐怖に怯えながら、バスローブの前をかき合わせた。


体だけじゃなく、自分の反応が亮介を萎えさせていたのだとしたら……


視線をさ迷わせながら、彩子はギュッと自分の体を抱き締める。


後退ろうとしたとき、ソファーから立ち上がった亮介が彩子を強引に抱き寄せた。


「なにか……あったのか?

いつものえみりらしくないな?」


(だって私はえみりじゃないもの!)


そう叫びだしそうになるけれど、そんなこと言えっこない。


< 140 / 273 >

この作品をシェア

pagetop