ダブルスウィッチ
会社の近くにあるカフェの窓際の席を陣取って、帰りの時間まで粘ることにした。


まだ時間はお昼を少し回ったくらい。



就業時間の終了は5時半だ。


それまでどうしようかと、えみりは店内をぐるりと見回した。


自分が働いていたときには入ったことがなかったな?と物珍しさにジロジロと。


さすがに店員に変な顔をされて、慌ててテーブルに目を戻す。


それから仕方なく頼んだアイスティを一口飲んだ。


そんなたいしたことのない一連のことにも、やはり自分は今は中年の女性なんだとえみりは思い知らされる。


自慢じゃないけれど、いつもなら、あの若い店員は目尻を下げて照れたように笑うはずだった。


目が合えば声をかけてきたりすることもある。


自分の容姿に自信があっただけに、えみりのショックは思った以上だった。


(亮介さんと暮らせるなら、どうってことないと思ってたのに……)


これではえみりに得することなど何一つない。


彩子は若く美しい容姿を手に入れただけじゃなく、亮介まで奪ったのだ。

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