ダブルスウィッチ
これは彼女の復讐なのかもしれないとえみりは思う。


今まであの状態で我慢できていたのは、自分だけだと思っていたからなんだろう。


愛人の存在を知って、きっと虚しくなったのだ。


自分が女として愛されていないことに……


それを知らせたのはえみり自身。


あの無言電話で彩子を追い詰めた。


怪しげな薬を買わせてしまうほどに。


だけど……とえみりは思う。


もっと虚しくならないんだろうか?と。


彩子の体はえみりなのだ。


亮介が触れるのは彩子じゃなくえみりの体。


それでも受け入れるつもりだとしたら、よほど切羽詰まってる。


もし自分なら、別れ話を切り出すだろうとえみりは思った。


他人の体で亮介を誘惑するよりも、愛人と別れさせることの方が利口に思える。


亮介は器用じゃない。


だから、自分と別れて次々と別の愛人を作るほど精力的ではないとえみりは思うのだ。


今の関係も、えみりの方から半ば強引に迫った関係でもある。


なのに、彩子はたぶん、えみりの姿で亮介と寝ようとしているのだ。


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