ダブルスウィッチ
私なら耐えられない、とえみりはゆっくり息を吐き出した。


もしかしたら、彩子はただ亮介に抱かれたいだけなのかもしれない。


そう思えば合点がいった。


もしえみりと別れさせたとしても、彩子を抱くとは限らないのだ。


だから、代わりでもいいから亮介を感じたいと思ったんだとしたら……


彩子がいるだろうビルをえみりは窓からじっと見つめた。


自分に彩子のしていることを止める権利があるんだろうか?と。


愛されずに何年も一緒にいることの辛さは並大抵のものじゃないはずだ。


えみりなど、まだ何時間も一緒にいたわけではないのに、不安で仕方なかったというのに……


アイスティのグラスについた水滴を見つめながら、深く深く息を吐く。


それから何かを決心したように、えみりは席を立った。


欲張ってはいけなかったんだとえみりは自分に言い聞かせる。


彩子はきっと純粋に一つのことだけを願ったのだ。


亮介と結ばれたいと。


それだけを……


その願いを潰す資格は自分にはないとえみりは思った。


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