ダブルスウィッチ
自分で決めたことなのに、彩子の心に後悔の波が押し寄せる。


知らない苦しみよりも、知ってしまった苦しみの方が、より大きかったことに愕然としていた。


えみりにはあんな風に笑顔を見せていたんだと思うだけで、彩子は自分たちの夫婦生活がいかにスカスカなものだったのかを思い知らされていた。


契約結婚は契約の上だけで成り立っているもので、気持ちなどどう頑張っても動かせるものではなかったのだ。


亮介に抱かれれば、少しは満たされると思っていた彩子は、これからどうすべきなのかを考えていた。


えみりの体のまま生きていくのも悪くはない、と。


知ってしまったからこそ、あの夫婦生活には戻りたくない、と。


いつか、自分を見てくれるかもしれないという彩子の細やかな願いは、この先ずっと叶わないと知ってしまったから。


(あの子には悪いけど、私は彼の側にいることより、愛されることを選ぼう……

若く美しい体を手に入れたんだもの、これからなんだって出来る

もしかしたら、亮介さん以外と新しい恋だって出来るかもしれない

そうしたら、彼と別れてあげたっていい)


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