ダブルスウィッチ
彩子の決心は固まりつつあった。


虚しいと思うよりも、新しい体と亮介の愛を手にいれたんだと思うように自分を無理矢理納得させて……


仕事も久しぶりに認められて、彩子はやりがいを感じてしまった。


頑張っても頑張っても、誰も誉めてくれない家事なんかよりも、よっぽどいいと彩子は思う。


ホームに降り立ち、長い脚を一歩踏み出した。


チラチラと見られることにも大分慣れて、堂々と闊歩することが出来る。


うろ覚えの自宅までの道のりを思い出しながら歩いていたその時――


後ろから誰かに声をかけられた。


振り返らなくてもわかる。


彩子のよく知る声だ。


覚悟はしていたけど、ずいぶん早いお出ましだと彩子は小さくため息をついてから仕方なく立ち止まり、ゆっくりと振り返る。


「えみりさん……

あなた、こんなとこで何してるの?

亮介さんなら帰ったわよ?

家で出迎えなくていいの?」


彩子は精一杯の嫌味をぶつけながら、余裕の笑みを浮かべた。


「あの、彩子さん!話があるんです!」


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