ダブルスウィッチ
自分の姿をこんな風に客観的に見るのは、不思議な気分だった。


ずいぶん、老けたような気がする……と、彩子はえみりである自分から目を背ける。


「私には、ないわ

悪いけど帰って……3ヶ月って約束でしょ?

亮介さんだって、心配するわ」


彩子は伏し目がちにそう言って、そのまま立ち去ろうとした。


けれどえみりは引き下がろうとはしない。


「亮介さんには、ちゃんとメールしてあります

友達の家に泊まるので心配しないでって」


その瞬間、彩子の頭に一気に血が昇った。


さっきまでの冷静な態度はどこへやら、キッとえみりである彩子を睨み付ける。


「そんなこと許されるはずがないでしょう!

家を空けることを彼は一番嫌がるの!そういうルールなのよ!

だから早く帰って!」


声を荒げる彩子に、えみりは逆に冷静だった。


「それはあなたと亮介さんのルールでしょう?

私には関係ない」


「あ、あなた!自分が何言ってるか、わかってるの!?

あなたは今、亮介さんの妻なの!

ちゃんと役目を果たしてくれなきゃ困るわ!」


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