ダブルスウィッチ
「知らない男に渡されるより、警察のが安心なんじゃないのかな?」


そこで初めてえみりは、この男性が煮え切らなかった意味を知った。


見ず知らずの男に携帯を拾われたなんて、えみりが不安がると思ってくれていたのだ。


紳士的な彼の態度に、えみりは好感を持った。


逆にそんな風に思ってくれている人ならば、危険はないと物語ってる。


「大丈夫です、あなたなら安心だって今思いましたから」


クスッと笑ってそう言ったえみりに、彼はようやく取りに行くことを承諾してくれた。


「じゃあ、さっき言ったカフェでお待ちしてますね?

僕は……そうだな?あなたの携帯をテーブルに出しておきますので」


目印になるものを探してくれたらしい彼は、結局えみりの携帯を目印にしたみたいだ。


「わかりました、急いで取りに行きますので、すみませんが少しだけ待っててください」


電話を切ったえみりは勢いよく走り出した。


こんな昼間なのだ。


もしかしたら仕事中かもしれない。


あまり時間を取らせるのは申し訳ない気がしていた。


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