ダブルスウィッチ
不思議だった。


憎しみあうべき二人なのに、なぜかお互いの心を理解しているような感覚。


それもこれも入れ替わったせいなのだとしたら、この状況も捨てたもんじゃないのかもしれない。


「そうと決まれば、今日はここに泊めてくださいね?」


「なんでそうなるのよ、ここ狭すぎて二人は無理でしょ?」


「ちょっと彩子さん、失礼ですよ!」


「あら、ごめんなさい」


顔を見合わせ、お互いにぷっと吹き出す。


こんな軽口が言えてしまうほど、彩子はえみりにすっかり心を許していた。


そしてえみりもまた、以前のような敵意を彩子に向けることはない。


鬱々と、ただ亮介を待つばかりだった10年を思うと、えみりとの出会いは自分を見つめ直すいい機会だったのかもしれないと、彩子は思う。


すっかり泊まるつもりのえみりが、立ち上がってクローゼットから部屋着を2枚取りだし、1枚を彩子に手渡した。


臆することなく、えみりは自分が手に取った方の部屋着に着替え出す。


着替え終わったえみりがおどけたように彩子にその姿を披露するのを見て、彩子はまた吹き出した。


自分には似つかわしくない、ブラトップのキャミソールに派手な模様のショートパンツ。


えみりも似合わないのがわかっていて、わざと選んだに違いない。


お腹を抱えて笑いながら、彩子はふと、結婚してから今日までこんなに笑ったことがなかったことに気づく。


皮肉だなと複雑な気持ちになったけれど、彩子はそんな自分を素直に受け止めて、久しぶりに声をあげて思いきり笑った。


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