ダブルスウィッチ
クスクスと笑いながら、えみりは最後にまだ握りしめていた紙屑を挑発するように亮介に向かって手放した。


その瞬間、左頬に熱が走り、えみりの体は床に崩れ落ちる。


いつの間にそんなに近付いたのか、目の前で仁王立ちになる亮介の掌が赤くなっているのが目に入って、えみりは自分が叩かれたのだと気付いた。


きっとこの異様な空気に耐えられなかったのだろう。


同時に馬鹿にされたのだと、プライドが傷つけられたに違いない。


(ほんとに、私の知ってる亮介さんとは別人みたい)


叩かれた方の頬をそっと擦りながら、ゆっくりと起き上がる。


わなわなという表現がぴったりな亮介の様子に、えみりは自嘲気味に笑った。


「どういうつもりだ!」


「どういうつもりって?」


「昨日からおかしいだろ!?

無断で外泊して朝帰りはするわ、契約書は破り捨てるわ、人が違ったみたいだろ?」


確かに、中身は違うけどね?と、えみりは心の中で舌を出す。


「ちゃんと友達のところに泊まるって、メールしたはずだけど?」


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