ダブルスウィッチ

「彩子さん、今までのこと……ほんとにごめんなさい

電話のことも申し訳なく思ってます

夫婦のことなんて何一つ知らないくせに、私、思い上がってました

彩子さんに辛い思いさせて……ほんとにすみませんでした」


深々と頭を下げるえみりに、隣に座っていた中年女性がチラリと目を向ける。


端から見れば、40代らしき女性が、派手な見た目の若い女の子に頭を下げているのだ。


好奇の目に晒されても仕方がない。


「なに言ってるのよ、そんなのお互い様でしょ？

頭を上げて？えみりさん
私だってあなたを騙したようなものなんだし、もう水に流しましょう？」


彩子が慌ててそう言うとえみりはようやく顔を上げた。


「元に戻る前に、一度きちんと謝っておきたかったんです

亮介さんのことは好きでしたけど、正直家で待ってる奥さんのことまで考えてませんでした

やっぱり人のものに手を出しちゃいけないんだって、今回のことで教えられた気がします」


晴れやかな顔でそう言い切ったえみりは、もうすっかり亮介のことは吹っ切れているように見えた。