ダブルスウィッチ
慣れない玄関の鍵を開けると、彩子は部屋の中へと入った。
小さなワンルームは相変わらずで、窓際に置いてある小さな観葉植物が出迎えてくれる。
水をやらなきゃ……と、彩子は靴を脱いですぐに小さなシンクへと真っ直ぐ向かった。
えみりと約束したのだ。枯らしたり出来ない。
アルミのじょうろに水を入れ、観葉植物の方へと足を向けてから、彩子はふと思う。
よく考えてみれば、明日の朝には元の体に戻るのだ。
明日になればえみりが水やりをするかもしれない。
夜よりは朝、水をやった方がいいだろうと思い直して、彩子はじょうろの水をシンクにそのまま流した。
着ていた服を脱ぎ、部屋着に着替える。
足がほとんどむき出しになるショートパンツは、相変わらず慣れないままだ。
ベッドにごろりと横になりながら、彩子はさっきまで会っていた亮介のことを思った。
えみりがどう話したのかはわからないが、亮介はえみりを抱こうとはしなかった。
こちらからするつもりだった別れ話も、亮介の方から先に切り出され、彩子は困惑してしまう。
こんなにあっさりと終われる関係だったのだろうか?と。
意を決していつもの部屋で待っていた彩子は、拍子抜けした。
それでも最後にえみりを抱くつもりでいるんだと思っていたからだ。