ダブルスウィッチ
やはり出世のためか……と、わかってはいたけれど、改めて亮介に言われたことに彩子は傷ついた。



「……そう」


深い溜め息と共に返事をすると、亮介はそっとえみりの手をとる。

それから逸らした目をまたえみりに向けて、口を開いた。



「妻とは……契約で結ばれた関係だった

そういう意味では、彼女は僕にとってなくてはならない存在なんだ

彼女は思ってた以上に僕の理想通りに動いてくれたし、おかげで僕は今の地位にいることが出来てる

いなくなるなんて考えたこともないくらい従順に尽くしてくれていたんだ

だから、今朝……えみりとのことがバレて別れをほのめかされたとき、正直動揺したよ

彼女は言わば仕事上のパートナーみたいなものだからね?」



悲しげに微笑んだ亮介の顔を、彩子はまじまじと見つめた。

もしかしたらなぜ別れないのか?とえみりが駄々をこねていると勘違いしたのかもしれない。

けれど驚いたのはその内容だ。

まさか亮介が彩子をそんな風に思っていたとは夢にも思っていなかったから。



「えみりのことは好きだ
愛しいと思う気持ちは嘘じゃない

だけど……妻と別れてえみりと一緒になる選択肢は申し訳ないが……ない

えみりに妻の代わりは務まらないし、もしそうなったとしたら、君の夢を潰すことになるだろう

僕は夢を追いかけるえみりを応援したい

だから……わかってくれるね?」






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