ダブルスウィッチ



泣きながら目を覚ましたそこは、えみりの良く知る匂いがした。

フカフカのベッドの感触とは違う、硬いソファーベッドの感触。



あぁ……戻ったんだ……



えみりは瞬時に理解した。

まるで夢をみてるみたいだった2日間は、そうとは思えないほど長い長い時間だった。



「ふ……くっ……」



えみりの目に、また涙がこみ上げてくる。

止まらない嗚咽に、えみりは戸惑った。

なにを泣くことがあると言うのだろう?

亮介との別れはえみり自身が決めたことだ。

彩子に亮介との夫婦関係を修復してほしいと願ったのも、まぎれもない本心。

なのにこんなにも悲しいのは、きっと最後に見せた亮介の顔のせいだ。

入れ替わってからというもの一度も見ることのなかった亮介の優しい笑顔を、えみりは最後の最後に目を焼き付けることになった。

それはえみりの良く知る亮介の、大好きだった顔。

それが彩子に向けられたものだとわかってはいても、心がざわざわと音を立てた。

だからえみりは受け入れてしまったのだ。

本来ならば、拒否しなきゃならない状況なのに、えみりは彩子としてでもいいから亮介に抱かれたいと願ってしまった。

最後に覚えておきたかったのだ。

大好きだった彼の、亮介の温もりを……

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